療育(発達支援)の目的
療育(発達支援)とは,障害のある子どもやその可能性のある子どもに対して,将来の自立と社会参加を目指し,医療と教育とをバランスを保ちながら並行して支援をすることです。「障害」と一口に言っても,身体障害や発達障害・知的障害などさまざまなですが,療育はその個々の発達の状態や障害特性に応じて,幅広い支援を実施することが特徴です。また,子どもに関して悩んでいる親の発達相談に応えることも,支援のひとつとなります。
子どもは1人ひとり発達のスピードが違います。特にダウン症のある子どもの場合,その子の発達の状況に合わせた関わりをすることで,できることを増やしたり,隠れている能力を引き出すことができます。例えば,姿勢を保つことや歩行が難しい子どもには,正しい姿勢や体の使い方を教えたり,言葉をつかったコミュニケーションが難しい子どもには,発音の仕方を教えたり,コミュニケーションの取り方を教えたりします。
また,ダウン症児は発達の遅れや知的障害はほぼ必発と言われていますが,その診断は出生直後に可能であるという特殊性があり,言い換えれば,出生直後より早期療育の可能な精神発達遅滞児と言えます。そこで,早期療育をおこなう例が増えてきています。早期から介入し,療育をおこなうことで,特性自体を治療することは難しいものの,正しい姿勢や口の動かし方を身に着けることで,関節の変形や言語による表現の不得意などといった二次的な問題を予防することができると言われています。
療育を担っている施設
療育を担っている施設は,児童福祉法に基づき,対象とする子どもが未就学児か小学生以上かによって異なります。未就学児(0~6歳)の場合は,療育センターや児童発達支援センター,児童発達支援事業所が代表的な施設になります。小学生以上の場合は,放課後等デイサービスの対象となります。また,自治体や運営している機関により,集団や個別などの支援形態,支援内容が異なるので,問い合わせや見学をしてみると良いと思います。
以下に,岩手県沿岸南部の施設を示します(ダウン症専門施設ではありません)。
市町村 | 施設名 | 運営機関 | 児童発達支援 | 放課後等デイサービス |
大船渡市 | 慈愛福祉学園デイサービスセンター | (社福)大洋会 | 〇 | 〇 |
空の青 | (特非)NOWBELBE | 〇 | ||
陸前高田市 | アップル | (社福)大洋会 | 〇 | |
あふたーすくーる・すてっぷ | (一社)Piece of happiness | 〇 | ||
釜石市 | すくすく親子教室 | 釜石市 | 〇 | 〇 |
さんこま | (一社)三陸駒舎 | 〇 | 〇 | |
ライトハウス | (特非)障がい者自立センターかまいし | 〇 | ||
大槌町 | 四季の郷 | (社福)大洋会 | 〇 | |
笑顔 | (一社)えがお | 〇 | 〇 |
療育を受けるまでの流れ
基本的には,サービスを受けるためには市町村から交付される『通所受給者証』が必要となります。通所受給者証にはサービス種別,利用する子どもと保護者の住所,氏名,生年月日,サービスの種類,支給量(利用可能日数),負担上限月額などが記載されています。この受給者証を取得することで,1割の自己負担でサービスを利用できます。また,自己負担額にはひと月あたりの上限が設けられており,世帯ごとの所得に応じて次のように設定されています。
・生活保護世帯・住民税非課税世帯…無料
・市町村民税課税世帯で所得割額が28万円未満の世帯…月額4,600円
・市町村民税課税世帯で所得割額が28万円以上の世帯…月額37,200円
受給者証の交付を受けるまでの流れですが,気仙地区・釜石地区の現状を調査してみたところ,健診などで発達の遅れが指摘された子どもに対して,保健師などからサービスを受けてはどうかと提案があり,相談支援事業所を紹介され,サービス事業所の見学などを経て,障害児支援利用計画案を作成。それを持って,市町村の児童福祉担当窓口などに申請という流れのようです(下図)。
すなわち,サービスを受けるにあたっては,子どもは常に受け身であるようです。これは,ダウン症児にとっては大きなマイナスであると考えます。何度も述べますが,ダウン症児は出生直後より早期療育の可能な精神発達遅滞児です。受け身の姿勢ではなく,自ら参加できる環境が必要と考え,+1 Happinessは活動を開始しました。