今は,少しスマホで『ダウン症』と検索すれば,数多くの情報を目にすることができます。これを読んでいるお母さん,お父さんもそうして検索魔になっている家族の1人でしょう。そして,都会ではダウン症専門の施設やプログラムがあることを知ると思います。
一方,岩手では…,検索してもなかなか情報は得られなかったと思います。
ダウン症は先天疾患の中では割と多い方ではありますが,絶対数としてはやはり少ないので,ある程度以上の人口がいる都市でないと専門施設としての事業が成り立たないことが原因と考えます。また,専門とはいかないまでも,一般的な児童発達支援サービスを提供してくれる事業所はありますが,その多くはある程度の年齢(2~3歳程度)からを対象としているところが多いようです。
ダウン症は,発達の遅れや知的障害はほぼ必発と言われていますが,その診断は出生直後に可能であるという特殊性があり,言い換えれば,出生直後より早期療育の可能な精神発達遅滞児と言えます。しかも,0歳から2歳の間は最も神経が発達する時期です。せっかくのチャンスであるこの時期に,適切な療育プログラムを受けられる環境がない。まず,ここに大きな問題があると考えました。
では,岩手ではダウン症児をより良い条件で育てられないのか。調べてみたところ,さまざまな機関・施設でさまざまなプログラムが提供されていますが,実際のところ『明らかにこれが良い』というものは無いようです(もし,有るのであれば,私たちも知りたいので是非ご紹介ください)。むしろ,多くの専門家が家庭での子どもとのふれあいがより重要としています。米国での調査報告によると,家庭で養育されたダウン症児と施設収容のダウン症児では,「支えなしに座る」という課題について,家庭で養育されたダウン症児の方が2か月早く達成したとされています。ダウン症児はおとなしい子が多いので,手がかからないといわれていますが,そのまま手をかけずにいることは2次障害(より発達を遅らせること)の原因になると言われています。多少押しつけがましく,子どもが嫌がるくらいに抱いて,ほおずりして,目を見つめて,話しかけて,ミルクを与える。子どもに触れて,刺激を与え,神経の発達を促す。これこそが一番の早期療育であるようです。
そこで,私たちは日本ダウン症療育研究会が行っている『ダウン症児の赤ちゃん体操』に注目しました。この体操はダウン症児特有の姿勢や歩容の予防や改善と運動発達促進を目的とした早期療育法です。そもそもが家族が自宅で反復することを前提としており,必然的に子どもとのスキンシップが図れます。これなら私たちにもできるのではないかと考えました。現在は,認定指導員研修修了者が2名おり,希望者とスケジュール調整を行いながら,個別に実施しております。
また,2023年より開始した『おもちゃ図書館』では,ダウン症児以外の障害児やその家族が来館しています。そして,その場を起点として家族間での交流や情報交換が行われ,成長したのちには,さまざまな体験会や行事を企画し,それらを通じて社会との繋がりを感じてもらえると素敵だなと思っています。
2024年4月
NPO法人Plus One Happiness 理事長 横沢 友樹
(現 岩手県立大船渡病院 救命救急センター長)